ハードボイルドですらなくとも
忘れないでほしい。だけど、思い出すのはやめてくれ。
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土曜日の夕方、テナーサックスを売りに出そうと考えていた。
サックスは自分のバーに置いてあるので取りに寄った。土曜は非番だ。店には常連のお客様がいたので少し話してから売りに出ようと思った。話題としてその話をすると当然ながらと言っていいのか分からないが止められた。とりあえずブルー・ジャイアント(漫画)の4巻を読んでから考えなさい、ということで思いとどまることにした。
他の方も、うっかり子供ができたり、授かったり、妊娠させた時まで売るのは待ちなさいと言う。なるほど。さらに思いとどまることにした。
土曜の晩はそのまま深酒して、それは書くに値しないほど楽しかった。
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日曜の昼。もうだめだ、これ以上は寝れない、というくらい寝ていた。眠りすぎて吐きそうだった。
今日は昨日より一日新しいくらいしか良いことがない。酔いがさめたらうちへ帰ろうと思って夜の散歩をしたのが間違いだった。3時間はくだらない写真を撮り歩いていた。朝には全て消去してまた浅い眠りについた。
服から、髪から、タバコの臭いがする。救われない朝に、救われない夢をみた。
スポーツ・ドリンクを飲み干し、コールマン・ホーキンスやデクスター・ゴードン、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツのレコードを聴いた。読書は捗らなかった。何度も同じページを読んでいたらもう仕事へ行く時間がきた。日曜はバーの店番だ。
閉店後、朝までやっている類のバーで数軒飲んでから帰った。この数軒が余計だなとも思うが、酒飲みはまっすぐ家には帰られないものだ。
帰りに街角のポン引きに腕を引っ張られ「3000円、3000円」と言われた。無視して歩いていたら女は「おねがい。助けると思って」と言った。
助けてほしいのは僕のほうだぜ。
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月曜になった今日、世間で言う連休は今日で終わりかと思った。結局志しもなく週末を過ごしたことになる。自分はクズだなと思ったが、クズなのはずっと以前からなので今更驚かない。結局今晩も行く宛はない。また飲むだろう。
風呂に浸かれば他に良い考えが出るはずだと思って浴槽にお湯を張った。アイデアは僕の場合、風呂に浸かっている時、歩いている時、自転車に乗っている時に出てくる。あとなぜか二日酔いの最中によく現れる。後悔と文を書くことは切っても切れない間柄なのだろう。
湯に浸かっている間、せめて頭の中で勝手に流れ出すメロディが実際に吹けるようになるまでサックスを続けようと思った。後は、自分はクズなのだから小説家でも目指そうかというクズみたいなアイデアしか出てこなかった。
バーひとつで生計を立てる自殺行為も悪くはないが、自分の才能のなさをどこかで痛感し苦しむ(自称)作家になるのだって僕にはお似合いかもしれない。
そういうわけで、髪を乾かしたらすぐに着替えてまた街に出ようと思う。街の中は退屈しない。今は、家から出ることが大切なのだ。
どうしようもない人生の、くだらない街で、好きなパン屋でも探す。
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