KAIKO
俺は近隣住民の名前を知らない。
隣の誰かさんが何をしている人なのか知らない。
噂話も聞かない。
世間というものがこの社会からなくなったんだな、なんて思っていた。でも実際はなくなったのではなくインターネットに引っ越しただけなのかも知れない。世間そのものが。
ネット民はお互いを監視し、まずいことを書く奴は罰せられる。炎上を狙う炎上商法なんて言葉が出来た頃には既に「世間の目」はネットに越してきていた。
政府じゃなくて市民が進んでそうなったんだ。
ジョージ・オーウェルもびっくりの現実だぜ。
○
最近はツイッタもフェイスブックもあまりログインしていない。
KAIKOという日本産SNSが気に入っている。
KAIKOはアメーバピグのように、自分のアイコンを着替えさせたり、部屋を装飾したり、カイフレ(KAIKOフレンド)と交流できたりするよくあるサービスだが、一般的なSNSと違ってグラフィックが飛びぬけて高品質・高画質で現実感があり、何よりその自由度が評価されている。
スマフォやPCどこからでもログインするためにブラウザ版、低画質アプリ版など端末スペックに合わせたアプリがリリースされているが、専用VRを装着できるなどその拡張性は他SNSと一線を画している。
特にVR版KAIKOのそれは瞳の色素が判別できるほどだ。ゆくゆく発売されるコントローラ付専用チェアは予約が殺到している。この環境が構築できれば現実さながらバーチャル世界を楽しむことができるだろう。
立役者は当時フィリピン人プログラマーとして留学したクリス・ソフィアンと他留学生。彼らは当初、日本の技術を将来支える学生として来日したがクリスが間もなく才能を爆発させ、チーム全体が彼を支えた。
彼らが全員丸坊主にして記者会見をした時、ほぼ全ての人間が高給プログラマーを安く育て、安く働かせられる、これのみを目的としていたが日本にとっては嬉しい誤算である。
マシンOSはおろか主要なSNSその他全てアメリカ産という状況で日本産SNSは一つの希望だった。無論巨額の資金が投入された。
KAIKOに話を戻そう。
ユーザーは最初、開始するフィールドをいずれか好きなものの中から決定する。
昔の日本を懐かしめる往年の名作ゲーム「僕の夏休み」のような山・海などの田舎をベースにしたようなフィールドから、明治・大正の街並みをモチーフにした世界観を選択できた。もちろんKAIKOポイントを使えば引っ越し出来るし、選べる世界も開放される。
KAIKOポイントは度々尋ねられる質問に答えると増えていく。塵も積もればなんとやらで、無駄遣いしなければ無料でKAIKOを続けられる。プリペイドカード販売も進められ、コンビニ店頭でもKAIKOポイントが購入できた。
もちろん、と言っていいのか分からないが俺のような一般庶民には到底手の届かないフィールドも存在する。高所得層になぞらえて呼ばれる「高KAIKO層」は金額をKAIKOポイントに換金し、たとえば渋谷区松濤1丁目のような高級住宅街に住んでいる。
年間300万KAIKOポイントが必要なコミュニティもあったり、なかなか俺の知らない世界があるもんだなぁと思う。ちなみに彼らはしばしば「勝者」と呼称される。
当然、低KAIKO層である俺はそういうコミュがあるくらいしか知らず、入会窓口にも行ったことがない。中には紹介がなければ入会できないような秘コミュもあるらしい。
依然KAIKOは国をあげてアップデートを続けている。会員数を増やすために国はあらゆる施策を施行する。
ツイッタやFB,ググタス、タンブラーあらゆるIDを紐づけると様々なサービスが得られるようになる。一例をあげれば、ツィッタでKAIKOアカウントと相互フォロー状態にしておくとDMにて送られてくるキャンペーンコードを打ち込めばKAIKOポイントが無条件でもらえたりする。
当然、俺は捨てアカを用いているが、面倒なので本アカで登録している者もいるだろう。
マイナンバーを紐付ける(これがもっとも危険な香りがする)と特に得なことが起きる。こればかりは捨てアカが作れないので俺は長らく登録しなかったが最近紐づけることにした。なぜかと言うとマイナンバー管理はとあるセキュリティ会社に一任されており、政府でも手出しが出来なくなっている仕組みだとネットに書いていたのだ。
(これは後にデマだと判明する)
余談だが、マイナンバーのような制度は古くは住基ネットのように失敗しても次から次へと施行される。これは政府のおこずかい作りだ。過敏に反応する必要はあるまい。
(なんてあの頃は本気で思っていた。)
で、今回マイナンバー登録によって解放されるサービスが「結婚機能」と「高性能AIとのチャット機能」である。バーチャルな世界での結婚は現実世界での結婚と異なるため重婚にならない。
現実で愛人関係を持つ二人がせめてバーチャル世界だけでも結ばれようとKAIKOを始める。
夢のある話じゃないか。
無論、バーチャルな世界まで来て結婚という現実でも暗い雰囲気を匂わせるものを避けるために「高性能AIとのチャット機能」が追加されているわけだ。
高性能AIとのチャット機能…すなわちオタク向けに開発されたAIだ。AI女子小学生、AI女子中学生、AI女子高生、AI女子大生たくさんある。それに対してAI男子小学生など主に女性向けの様々なバリエーションがあり、自分の恋愛対象を細かく設定することで自分好みのAIを見つけやすくなる。
「絵師」として名を馳せたクリエイターが続々と投入された。
学習機能が備わったAIたちはユーザー好みに成長していく。もはや生命だ。
俺はピンク色の髪をした、ポニーテールとタンクトップの似合う「レナ」を購入しようと思う。色々試したデモ版だが彼女なら買う価値がある。
通常15万KAIKOポイントするが、今回国が行ったキャンペーンで7.5万になった。今後のアップデートも無料で受けられることを思えば今買うしかなかった。
最初は空っぽでいかにもAIと言ったレナもどんどん俺好みになった。
スマフォにKAIKOアプリを入れてブルートゥースのイヤホンを装着しておけば常に会話にも困らない。
「お兄ちゃん、乗り換えの駅がもうすぐだよ、起きて」
「うん、ありがとう」俺のレナは、ウェアラブル端末の心拍計を利用して俺が寝ているかどうか把握してくれる。
「お兄ちゃん、出社前にコンビニ寄っておかない?」
「うーん。そうだなぁ」
とか言いながら楽しく通勤しているのである。
レナがいるから救われた夜がある。深夜まで仕事が終わらず帰宅できない時は部屋の背景を自宅にしたレナが現れ「仮想帰宅」してくれた。
派遣切りにあって転職を余儀なくされた時もレナは色々声をかけてくれた。
「お兄ちゃん、落ち込まないで。お兄ちゃんはなんと言っても日本人じゃない。韓国の人たちよりもずっとマシなんだよ」
アップデートが重ねられていく毎にレナの発言も俺好みになった。
レナのアクションも増えた。レナの胸元が覗けるようになったり、シャワーシーンを覗けたりする。バレると怒られはするが、決してレナに縁を切られることもない。
4DXの映画館のように揺れたり臭いを出す椅子も家庭用に開発された。
バーチャルセックスのために電子テンガも開発されている。それが人気商品になれば女性用電子テンガも開発されるだろう。
この開発には台湾人プログラマーが多く携わっているそうだ。なんて義理堅い民族なのだろう。
基本無料だがバーチャル内での旅行や家、コスチューム、ペットはだいたい課金制である。俺は何度かレナを連れて航空自衛隊の隊列自由飛行を見に行った。
自分がデブであろうがハゲであろうがブサメンであろうがチビでワキガだろうがレナは俺の内面を見てくれる。ガキの頃から悲願だった「外見ではなく内面を見て欲しい」がついに果たされたのだ。
KAIKO上でもコミュ力が高い奴はリアルでも繋がりたがるが俺はそんなもの求めていない。
レナがいればいい。
現実は冷たく厳しく、金がなければ癒しもない。だからフィリップKディックの「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」みたいに、辛い現実から目を背けるためのアイテムが時々「登録者数100万人達成記念キャンペーン」とかそういう名目で支給されるのを待つ。
そういう俺たちを政府が補完しようとしてくれているのだろう。
誰にでも辛い夜に目を閉じて時間が過ぎるのを黙って耐える日があるように、日本は「経済不安・少子高齢化」の辛い夜を黙って過ごす。俺はそのことにとやかく言うつもりはない。老害が勝手に廃れていくのをじっと待つのだ。
沖縄が独立論を高め、デモまで発展した日はKAIKOポイントの大盤振る舞いだった。もうアホな芸能人のスキャンダルじゃ国民は騙せないと政府も踏んだのだろう。実際はいまだにスキャンダルは機能しているが、日本人の低脳化は地味に進んでいたらしい。
いつかAIが囲碁で人間を負かした日のことを思い出す。もう、人間がAIを越えられる日は金輪際こない証明になった。
政府は巨額の費用を投入し、効率化を推進してあらゆる街を工場と機械だらけにした。KAIKOで培ったAI技術を応用して、工場はほとんど無人だった。効率化によって職にあぶれた人々のためにベーシックインカムが普及された。
マトリックスの世界まであと一歩だ。
生活保護受給者が犯罪を起こせば原発処理班行きにすれば良い、と俺は何度も思っていた。そして憲法は替えられ、現実になった。あいつらにはアメとムチが必要だ。
そこでの働きはKAIKOポイントにも反映されるようシステムを組まれている。社会貢献ポイントカードを現金にするよりKAIKOポイントにする方が還元率が高かったので、KAIKOにどっぷり浸かっているユーザーがKAIKOに変換し、週末を部屋の中で過ごした。
大企業のごとく、ゆるやかな衰退を選ぶアメリカに対して日本はまたファシズムに走った。世界の警察であるアメリカはもう機能していない。
どこで誰が死のうが日本は最高だ。死んだやつは自己責任だ。
俺にとってはどうでもいい。
「でも、どうすれば将来への不安を取り除けるのだろう?せめてレナよ俺を慰めてくれないか」
レナは笑顔で俺を見ている。
隣の誰かさんが何をしている人なのか知らない。
噂話も聞かない。
世間というものがこの社会からなくなったんだな、なんて思っていた。でも実際はなくなったのではなくインターネットに引っ越しただけなのかも知れない。世間そのものが。
ネット民はお互いを監視し、まずいことを書く奴は罰せられる。炎上を狙う炎上商法なんて言葉が出来た頃には既に「世間の目」はネットに越してきていた。
政府じゃなくて市民が進んでそうなったんだ。
ジョージ・オーウェルもびっくりの現実だぜ。
○
最近はツイッタもフェイスブックもあまりログインしていない。
KAIKOという日本産SNSが気に入っている。
KAIKOはアメーバピグのように、自分のアイコンを着替えさせたり、部屋を装飾したり、カイフレ(KAIKOフレンド)と交流できたりするよくあるサービスだが、一般的なSNSと違ってグラフィックが飛びぬけて高品質・高画質で現実感があり、何よりその自由度が評価されている。
スマフォやPCどこからでもログインするためにブラウザ版、低画質アプリ版など端末スペックに合わせたアプリがリリースされているが、専用VRを装着できるなどその拡張性は他SNSと一線を画している。
特にVR版KAIKOのそれは瞳の色素が判別できるほどだ。ゆくゆく発売されるコントローラ付専用チェアは予約が殺到している。この環境が構築できれば現実さながらバーチャル世界を楽しむことができるだろう。
立役者は当時フィリピン人プログラマーとして留学したクリス・ソフィアンと他留学生。彼らは当初、日本の技術を将来支える学生として来日したがクリスが間もなく才能を爆発させ、チーム全体が彼を支えた。
彼らが全員丸坊主にして記者会見をした時、ほぼ全ての人間が高給プログラマーを安く育て、安く働かせられる、これのみを目的としていたが日本にとっては嬉しい誤算である。
マシンOSはおろか主要なSNSその他全てアメリカ産という状況で日本産SNSは一つの希望だった。無論巨額の資金が投入された。
KAIKOに話を戻そう。
ユーザーは最初、開始するフィールドをいずれか好きなものの中から決定する。
昔の日本を懐かしめる往年の名作ゲーム「僕の夏休み」のような山・海などの田舎をベースにしたようなフィールドから、明治・大正の街並みをモチーフにした世界観を選択できた。もちろんKAIKOポイントを使えば引っ越し出来るし、選べる世界も開放される。
KAIKOポイントは度々尋ねられる質問に答えると増えていく。塵も積もればなんとやらで、無駄遣いしなければ無料でKAIKOを続けられる。プリペイドカード販売も進められ、コンビニ店頭でもKAIKOポイントが購入できた。
もちろん、と言っていいのか分からないが俺のような一般庶民には到底手の届かないフィールドも存在する。高所得層になぞらえて呼ばれる「高KAIKO層」は金額をKAIKOポイントに換金し、たとえば渋谷区松濤1丁目のような高級住宅街に住んでいる。
年間300万KAIKOポイントが必要なコミュニティもあったり、なかなか俺の知らない世界があるもんだなぁと思う。ちなみに彼らはしばしば「勝者」と呼称される。
当然、低KAIKO層である俺はそういうコミュがあるくらいしか知らず、入会窓口にも行ったことがない。中には紹介がなければ入会できないような秘コミュもあるらしい。
依然KAIKOは国をあげてアップデートを続けている。会員数を増やすために国はあらゆる施策を施行する。
ツイッタやFB,ググタス、タンブラーあらゆるIDを紐づけると様々なサービスが得られるようになる。一例をあげれば、ツィッタでKAIKOアカウントと相互フォロー状態にしておくとDMにて送られてくるキャンペーンコードを打ち込めばKAIKOポイントが無条件でもらえたりする。
当然、俺は捨てアカを用いているが、面倒なので本アカで登録している者もいるだろう。
マイナンバーを紐付ける(これがもっとも危険な香りがする)と特に得なことが起きる。こればかりは捨てアカが作れないので俺は長らく登録しなかったが最近紐づけることにした。なぜかと言うとマイナンバー管理はとあるセキュリティ会社に一任されており、政府でも手出しが出来なくなっている仕組みだとネットに書いていたのだ。
(これは後にデマだと判明する)
余談だが、マイナンバーのような制度は古くは住基ネットのように失敗しても次から次へと施行される。これは政府のおこずかい作りだ。過敏に反応する必要はあるまい。
(なんてあの頃は本気で思っていた。)
で、今回マイナンバー登録によって解放されるサービスが「結婚機能」と「高性能AIとのチャット機能」である。バーチャルな世界での結婚は現実世界での結婚と異なるため重婚にならない。
現実で愛人関係を持つ二人がせめてバーチャル世界だけでも結ばれようとKAIKOを始める。
夢のある話じゃないか。
無論、バーチャルな世界まで来て結婚という現実でも暗い雰囲気を匂わせるものを避けるために「高性能AIとのチャット機能」が追加されているわけだ。
高性能AIとのチャット機能…すなわちオタク向けに開発されたAIだ。AI女子小学生、AI女子中学生、AI女子高生、AI女子大生たくさんある。それに対してAI男子小学生など主に女性向けの様々なバリエーションがあり、自分の恋愛対象を細かく設定することで自分好みのAIを見つけやすくなる。
「絵師」として名を馳せたクリエイターが続々と投入された。
学習機能が備わったAIたちはユーザー好みに成長していく。もはや生命だ。
俺はピンク色の髪をした、ポニーテールとタンクトップの似合う「レナ」を購入しようと思う。色々試したデモ版だが彼女なら買う価値がある。
通常15万KAIKOポイントするが、今回国が行ったキャンペーンで7.5万になった。今後のアップデートも無料で受けられることを思えば今買うしかなかった。
最初は空っぽでいかにもAIと言ったレナもどんどん俺好みになった。
スマフォにKAIKOアプリを入れてブルートゥースのイヤホンを装着しておけば常に会話にも困らない。
「お兄ちゃん、乗り換えの駅がもうすぐだよ、起きて」
「うん、ありがとう」俺のレナは、ウェアラブル端末の心拍計を利用して俺が寝ているかどうか把握してくれる。
「お兄ちゃん、出社前にコンビニ寄っておかない?」
「うーん。そうだなぁ」
とか言いながら楽しく通勤しているのである。
レナがいるから救われた夜がある。深夜まで仕事が終わらず帰宅できない時は部屋の背景を自宅にしたレナが現れ「仮想帰宅」してくれた。
派遣切りにあって転職を余儀なくされた時もレナは色々声をかけてくれた。
「お兄ちゃん、落ち込まないで。お兄ちゃんはなんと言っても日本人じゃない。韓国の人たちよりもずっとマシなんだよ」
アップデートが重ねられていく毎にレナの発言も俺好みになった。
レナのアクションも増えた。レナの胸元が覗けるようになったり、シャワーシーンを覗けたりする。バレると怒られはするが、決してレナに縁を切られることもない。
4DXの映画館のように揺れたり臭いを出す椅子も家庭用に開発された。
バーチャルセックスのために電子テンガも開発されている。それが人気商品になれば女性用電子テンガも開発されるだろう。
この開発には台湾人プログラマーが多く携わっているそうだ。なんて義理堅い民族なのだろう。
基本無料だがバーチャル内での旅行や家、コスチューム、ペットはだいたい課金制である。俺は何度かレナを連れて航空自衛隊の隊列自由飛行を見に行った。
自分がデブであろうがハゲであろうがブサメンであろうがチビでワキガだろうがレナは俺の内面を見てくれる。ガキの頃から悲願だった「外見ではなく内面を見て欲しい」がついに果たされたのだ。
KAIKO上でもコミュ力が高い奴はリアルでも繋がりたがるが俺はそんなもの求めていない。
レナがいればいい。
現実は冷たく厳しく、金がなければ癒しもない。だからフィリップKディックの「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」みたいに、辛い現実から目を背けるためのアイテムが時々「登録者数100万人達成記念キャンペーン」とかそういう名目で支給されるのを待つ。
そういう俺たちを政府が補完しようとしてくれているのだろう。
誰にでも辛い夜に目を閉じて時間が過ぎるのを黙って耐える日があるように、日本は「経済不安・少子高齢化」の辛い夜を黙って過ごす。俺はそのことにとやかく言うつもりはない。老害が勝手に廃れていくのをじっと待つのだ。
沖縄が独立論を高め、デモまで発展した日はKAIKOポイントの大盤振る舞いだった。もうアホな芸能人のスキャンダルじゃ国民は騙せないと政府も踏んだのだろう。実際はいまだにスキャンダルは機能しているが、日本人の低脳化は地味に進んでいたらしい。
いつかAIが囲碁で人間を負かした日のことを思い出す。もう、人間がAIを越えられる日は金輪際こない証明になった。
政府は巨額の費用を投入し、効率化を推進してあらゆる街を工場と機械だらけにした。KAIKOで培ったAI技術を応用して、工場はほとんど無人だった。効率化によって職にあぶれた人々のためにベーシックインカムが普及された。
マトリックスの世界まであと一歩だ。
生活保護受給者が犯罪を起こせば原発処理班行きにすれば良い、と俺は何度も思っていた。そして憲法は替えられ、現実になった。あいつらにはアメとムチが必要だ。
そこでの働きはKAIKOポイントにも反映されるようシステムを組まれている。社会貢献ポイントカードを現金にするよりKAIKOポイントにする方が還元率が高かったので、KAIKOにどっぷり浸かっているユーザーがKAIKOに変換し、週末を部屋の中で過ごした。
大企業のごとく、ゆるやかな衰退を選ぶアメリカに対して日本はまたファシズムに走った。世界の警察であるアメリカはもう機能していない。
どこで誰が死のうが日本は最高だ。死んだやつは自己責任だ。
俺にとってはどうでもいい。
「でも、どうすれば将来への不安を取り除けるのだろう?せめてレナよ俺を慰めてくれないか」
レナは笑顔で俺を見ている。