いい大人のくせに

やけに心細い夜だったのである。

酒がダメなところに入った。無性に機嫌が悪くなって「パパ!まだ生きてて欲しかったのに!」と叫びながらアスファルトにスマフォを投げつけた。

画面がバリバリに割れ、露わになったバッテリーを引きちぎり、それから思い切り泣いた。


僕が父親をパパと呼んでいたのは何歳までだったっけ。両親が離婚したのは僕が小学3年生の頃だったから、きっとそれまでだと思う。

子供にとって親は箱庭の神様で、人間である限りこの運命からは逃げられない。
育ててくれなかったことを根に持つのは意味がないと知りながらも原体験はいかんともしがたかったりする。

翌日、ひどい二日酔いで木下大サーカスを見に行った。

腫れた瞼に触れる指先が震えていた。
僕は改めて自分が欠陥品であることに気付く。

サーカスは面白かったよ。

○
その夜も当然酔っていた。
深夜まで開いている古本屋で小中学生の頃に読んでいた漫画を立ち読みする。

当時は「漫画はもう読まない。小説のほうが人生のためになる」と大人ぶって連載途中で放棄したものの、子供の頃好きだったものは残念ながら大人になっても好きだ。

当時の僕は「子供の頃好きだったものにずっと縛られている大人は馬鹿だ!」と思っていた。変わりたいと思う意思が、変われない男を馬鹿にしていた。

立ち読みした懐かしい漫画は下らないギャグがいっぱいあるんだけど周囲気にせずゲラゲラ笑ってしまった。

結局僕も、読まなかった漫画の続きを読むことで欠落した感性を補完している。

○
繊細さはどうやら才能じゃないなと気付いたところで自嘲以外に出来ることはない。

僕は数日前31歳になった。

誰かにかまわれたい繊細なおっさん。
笑えないな。

それでもこういう僕のことを知っている人がいるのは嬉しい。
一週間ほど前はKさんと飲んで「最近飲みすぎじゃないか」と色々と気遣ってくれた。

二日前はFさん夫婦、Yさんと4人で飲み、Fさんが「最近どうしたんだ」と言えば、奥さんは「疲れているのね」と労ってくれた。

のんきに「なんのことかな?」なんて思っていたがその場にいたYさんは数日前、酔って変わり果てた僕を目撃していたのだ。後から合流した僕は、合流する前に僕の話をしているなんて思わなかったのでちょっと戸惑った。

奥さんは優しく「誕生日プレゼントなにがいいの?」と言うので、じれったくなって「ぎゅ、牛丼一杯でいいです」と答えてしまった。

こういう時は参る。

○
懲りずに昨晩も呑んだ。久しぶりに寄ったバーでCさん夫婦と会い、彼らも「久しぶりだな、会いたかったぜ」と言ってくれた。誕生日を迎えた0時、僕はえっちな動画を見ていたと言うと笑ってくれた。

帰り際「また飲もう。けど今日は酔っているみたいだしまっすぐ帰れ」と言われた。二軒ほど寄ったがどこも閉まっていたので帰った。

自分の中ではまっすぐ帰ったことにする。

○
今月のアマゾン予算は熊本とエクアドルに募金して、自分は何か大きなことをしたと思うことにも成功した。しばらく図書館に通う。

そうだ。気が付けば毎月アシが出ていたアマゾン予算、次からは金券ショップで毎月一定額のアマゾンカード買ってクレカ使わないようにしようかな。
クレカは危険だ。

稼ぐのも大事だけど、倹約だって大事だものな。お金が貯まったらどっか暖かい場所に旅行へ出よう。夜には海の見えるバーでロバート・バーンズでも飲んでさ。

今日はここまで。

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