自分だけ救われようともがく人たちの中で
あなたは空を見上げる。
曖昧な過去と、向かう宛てのない未来を見る。
楽しいもので身の回りを埋めても、癒されない傷がある、と思っている。
あなたは自分が精神的に疲れていることに気付かない。
心のきしみが、あなたからあらゆる知覚を引き抜いている。
あなたはもう何を失ったのかさえ気付かない。
あなたは飲みすぎた翌朝、雨が降っているのを感じるとそのまま蹲り、必死に逃避できる想像を探す。幼い頃の不安ばかりが波のように押し寄せるのを避けられない。
全て死のせいにして生きることの侘しさを忘れられないのなら、遠くへ行くか、眠る時間を増やせば良かったとあなたは思う。一人にならなければならなかったのにあなたはそれに従わなかった。
時には汗を流し、涙を流し、血を流し、生きていると実感するために様々な努力をしてきただろう。実際、あなたは自分自身を檻に入れてまでして自分を強く律しようとしてきた。
生き残るために自分を飼い慣らさねばいけないとあなたは何度も言い聞かせてきた。
あなたは昔ぼんやり歩いたあの動物園が、今この社会全体にまで拡張されているのに気付く。あなたはもう死ぬまで生きるだけの商品であることを自覚しなければならない。
あなたは一つ気付けば他のカラクリに気付く愚か者だ。
今、仕事や趣味、恋愛、その全てが死ぬまでの暇潰しに過ぎないと気付いた。様々な工程を経てようやく手に入れた死も、実は車に轢かれ死んだ猫とその本質は変わらないという事実にも気付いた。
あなたはもう幻覚の外側を歩かねばならない。
「自分が死んで誰かが泣くうちは死んではならない。」
あなたはそれを自分に言い聞かせてるが、本当はその言葉のどこが正しいのかは分かっていない。
あなたは自分だけ救われようともがく人たちの中で、あなただけがそうではないと言い切れない人生を呪っている。
悲しみのベッドにとらわれながら、あなたは未だに過去の苦しい記憶と闘っている。人はその闘病生活に気付かない。
もう、包帯を巻いてくれるわけでもない人に傷を見せない。
あなたは死の歯形を喉元に残しながら歩く。
傷がある限りどうしたってあなたの孤独は消えない。
命を燃やすことで孤独が薄れるのなら、あなたは、あなたは、あなたは…