言い訳する毎日

昨晩も飲み過ぎた。布団の中で目眩を覚える。ベッドから外が暖かくなったりまた寒くなったりしているのを感じていた。そうしてまたいつの間にか眠りに落ちて、また見たこともない悪い夢を見ていた。

夕方になって起きた時、シャツは寝汗で濡れていた。張り付くシャツを脱ぎ、歯ブラシを浴室に持ち込んで、肩に熱いシャワーを浴びせながら歯を磨いた。鏡の中の自分を見る。
先日つけられたキスマークが薄くなっていた。

シャワーを浴びている最中、昨晩、ぼくに対し「あなたこの先どうするの?」と言ったあの女を思い出していた。酔っている時に言われる嫌みは心に張り付く。
その質問をそっくりそのまま言い返したくなるような女だった。他人の行く末が気になる人は自分の行く末を考えたくない人だ。そうに決まっている。

栓を止めて、蒸気でいっぱいになった浴室を見渡した。ビールを飲もうと思った。

腰にバスタオルを巻いて出て、冷蔵庫の扉を開けてしばらく眺めた。相変わらずビールしか入っていない。

ビールを飲みながら友人Tと孤独について語った日について思い出した。他人がいるから我々は孤独であるとか、人と人とのつながりのことを話し合ったと思う。今のぼくは孤独の癒しかたより、この生活の終わらせかたを知りたい。
お先真っ暗なのが生きている証拠じゃないだろう。

大量に水を飲んで、二日酔いが治まってるのを確認すると小説を書こうとポメラの電源をいれた。

三月末の昼下がりに瑞光寺まで歩いたことを日記にしようとして、途中で投げ出しているデータを見つけた。

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瑞光寺という寺の境内で雪鯨橋(せつげいきょう)という名の短い橋を見つけた。鯨の骨を随所に使用し作られた橋だった。wikiによると最初の橋は18世紀半ばに架けられたのだそうだ。橋のすぐ近くに桜の木が立っていて、寺を背景に桜の薄いピンク色と骨特有の白さが日本特有の淡い春を表現していた。
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これ以後はうだうだ楽しそうなことを書いていた。綺麗な女とワインやパスタ、アボカドを食べたことを書いていた。
なんてこった。幸せそうだ。こんなのは自分じゃないと思う。こんなこと書いて記録しておこうとする自分が何より残念だ。

プラスだったものをゼロにするために、ぼくは100円ローソンに売っている全然美味しくない焼きそばを買って食べた。全然美味しくなかった。



あれから一ヶ月経って景色はどのくらい変わったのだろう。気になるなら確かめに行けば良い話だが今年も花粉症がひどく、外に出るのが億劫で見に行く気になれない。当然アレルギー薬を飲んでれば治まるから行かない理由はすぐに排せられるのだけど、ぼくはいつだってこんな簡単な理由に逃げ込んで行動を起こさない男だ。

ぼくはここ数年そんな言い訳が上手になった。どれくらい上手になったかと言うと、例えば「バイト辞めたいんだけど…」と言ってる女に「じゃあ辞めたらどうかな」なんて返事した日には、けっこうな確率で辞められない理由を話し出すだろ。
あの人たち平気で2時間くらい話し出す。話してる最中に高ぶってきて、いきなり怒り出すの、あれいったい何なんだろうな…

話が逸れそうだから戻すけど、要は、ぼくはそれくらい言い訳が上手になったのだ。こういう大人になったらお終いだと子供の頃は思っていたけど、言い訳するくらいで毎日を過ごしていけるのだから人生はまぁまぁ楽だと思っている。
みんな、言い訳しまくって現実から逃げたら良いと思う。そのうちガンか寿命で死ぬのを待ってたら良いと思う。
悩み事にぶつかったらとりあえず肉でも食っとけ。友人Tもそう言っている。


ぼくが暗いものばかり書いているのは人生が暗いためだが、悲しみを知らない人間は喜びを知ることだってないだろう。不幸せなことばかり書くのは、ぼくが幸せを知るためだ。決してあなたのためではない。

そういうわけでぼくはぼくの言い訳を今日もはじめようと思う。
さて、昨晩は何故飲みすぎたのだろう。

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